1. ジョーという名前
Joe は誰のこと?
Joe(ジョー)は男性名です。Joseph(ジョセフ)などの名前の愛称も Joe。
女性名でも Joanna(ジョアンナ)、Joanne(ジョアン、ジョアンヌ)、Jodie(ジョディ)は「ジョー」という愛称で呼ばれますが、その場合、スペルは Jo になるようです。
Joe は「一般的な男性」
Joe は「誰」と特定しない、一般的な男性を指すスラングとして使われます。ただ、名前の Joe の場合もあるため、 Joe 単体では用いず、何らかの語を伴うのが普通です。
e. g.
good Joe「親切ないい人」、average Joe「普通の一般的な人」、regular Joe「普通の一般的な人」
- He's a good Joe.
(彼は親切な男だ)
- I like to think I'm a bit more intelligent than your average Joe.
(私は普通の人より少し知的だと思いたい)
こんなふうに Joe の前に形容詞が前に付く他、Joe の後に名詞が来て、疑似的な名字のような使い方もします。
たとえば、Joe Sixpack は「一般的なアメリカ人男性」です。シックスパックは腹筋ではなく、アメリカ人男性は1パック6本入りのビールが好きなところから来ているとか。他にも「一般的な男性」を表す言葉はたくさんあります。
e. g.
Joe Bloggs「一般的な男性」(UK)、Joe Blow / Joe Doakes「一般的な男性」(US)
Joe Public「普通の人々」、Joe Soap「おバカな人」(UK)、Joe College「一般的な大学生」
- Joe Sixpack doesn't care about that.
(一般的な男性はそんなことは気にしない)
- What do you think Joe Blow really thinks about all this?
(普通の男性がこのことを本当はどう考えていると思いますか?)
辞書に載るような言葉でなくとも、Joe を使った呼称は無尽蔵です。
『Peanuts(ピーナッツ)』には、スヌーピーが変装した Joe Cool というキャラクターが出てきます。サングラスをかけて、見るからにクール。Joe Choke というのもあり、谷川俊太郎さんは「ミスター・コチコチ」と訳されてました。
また、映画『ジョー・ブラックをよろしく』(1998)で、ブラッド・ピット演じる死神が、名前を問われた時、咄嗟に Joe Black と名乗っています。
「人」以外の joe
joe job(やりがいのない仕事)
さらに、joe は「人」ではないものを示したりもします。joe job は「やりがいのない仕事」「下働きや低賃金の仕事」のこと。
- Mostly I've just been given joe jobs around the office.
(私はたいていオフィス周辺のつまらない仕事を与えられる)
- I took on all sorts of joe jobs to support myself while I was in university.
(大学在学中は、自活のためにいろいろな仕事を引き受けた)
cup of joe(コーヒー)
cup of joe(略して、cuppa joe)は、a cup of cofee(一杯のコーヒー)を言うアメリカのスラングです。もとは軍の用語だそう。なぜ Joe が cofee の意味になったのか、起源ははっきりしません。
米俗語で「コーヒー」を意味する jamoke という語があり、これは Java(ジャワコーヒー)+ Mocha(モカコーヒー)を合体させたものです。
joe は jamoke の短縮形だ、という説もあれば、 average Joe(一般的な人)の飲み物だから、という説もあります。
- I can't even function in the morning until I've had my first cup of joe.
(私は最初の一杯のコーヒーを飲むまで、朝は機能すらしない)
- The company sells 20 million cups of joe a year.
(その会社は年間2000万杯のコーヒーを販売している)
2. John と Jane
John は誰のこと?
一般的な名前として Joe がよく取り上げられますが、同様に John を使った言葉もあります。女性の場合は、Jane。
e. g.
John Doe「名前のない人」、John Hancock「署名」
John Doe(名前のない人)
もともと John Doe(ジョン・ドウ)は、法廷で原告側の名前を伏せるために用いられていたそう。一方、被告側は Richard Roe(リチャード・ロウ)。
かつては、そういった「身元不明の男性」「身元を明かせない男性」を示し、19世紀になってから「一般的な普通の人」の意味になったようです。
- The victim is a John Doe.
(被害者は身元不明の男性だ)
- This television show is just right for a John Doe.
(このテレビ番組は一般男性にちょうどいい)
Jane Doe や Jane Roe は、John Doe の女性版です。
John Hancock(署名)
John Hancock(ジョン・ハンコック)は「(書類への)署名」という意味のスラング。
- Just put your John Hancock here.
(ここに署名してください)
John Hancock は実在の人物で、独立宣言の時、Hancock氏が最初に大きく人目を引く文字で署名したことから来ているとか。John Henry という名も「署名」の意味で使われます。
3. Mr、Mrs、Miss、Ms の付け方
敬称は「姓」の前
Mr(Mr.)や Mrs(Mrs.)といった敬称は、男性も女性も「姓」の前に付けます。ピリオドが付くのはアメリカ英語です。邦題で『ミスター・アーサー』という映画がありました(原題は Arthur)が、愛称としては「名前」につくのもありでしょう。
また、名前でなく肩書きの前に付けて、Mr Chairman(議長)、Mr. President(大統領)のように呼び掛けに使ったり、ユーモアを交えて、Mr. Nice Guy や Mr. Perfect のように言ったりもします。
「名前+姓」の前でもOKです(Mrs、Ms、Miss も同様)。Mr and Mrs 〇〇は、「〇〇夫妻」のことで、〇〇s と複数の -s は付きません。
e. g.
Mr John Brown「ジョン・ブラウン氏」、Mr and Mrs Brown「ブラウンご夫妻」
Mr は mister の略語で、master(主人)を弱めた形です。複数形は Messrs [mésərz]。人名の入った会社名などで使われます。
e. g.
Messrs Smith, Brown and Jones「スミス、ブラウン、ジョーンズ各氏」、Messrs T Brown and Co「T・ブラウン&カンパニー」
Miss(ミス)
Miss [mís] は、未婚女性に対する敬称ではあるものの、既婚者でも旧姓のままの女性には、Miss を使ったりします。
名前の分からない女性への呼び掛けにも使われます。映画『タイタニック』(1997)で、“Where to, Miss?”(お嬢さん、どちらへ?)という台詞がありました。敬称は、名前を出さずに呼ぶ時に便利ですね。
Ms(ミズ)
Ms は、既婚・未婚問わず使える言い方。発音は [míz]。1950年代に、Mrs と Miss を合わせた語として使われ出したとか。
Mrs(ミセス)
既婚女性に対する敬称で、発音は[mísiz]。mistress(女主人)の略語です。本来の mistress は「主人」と習慣的な性的関係にある女性を示し、「妻」とイコールとは限りません。
「妻」の意味で、missus [mísəz] という似た語もあります。ただし、これはやや古い用法で、今の若い人たちは「ガールフレンド」の意味で使うようです。
4. 人名のスペルとアナグラム
綴りと発音
英語でも、人名のスペルや読み方は一通りじゃありません。
マイケル
一般的なのは Michael、フランス語読みだと「ミシェル」。他に、Michel(男性名)、Michelle(女性名)、Michele、Mishale(ミシェール)など。
メリー
Mary は、日本人的には「マリー」と読みたいところですが、カタカナ表記は「メリー」か「メアリー」。「マリー」なら、スペルは Marie で、アクセントは [məríː] と、後ろの方に来ます。
ポイント
「リー」と伸ばす音は、-ly より、-lie が多い。たとえば、「ナタリー」は Natalie、「チャーリー」は Charlie
ナオミ
英語名の Naomi は、a が [ei] になり、「ネイオミ」のような発音です。昔ニュージーランドで、ホストマザーに「Naomi という名前、日本人にもあるの?」と聞かれたことがあります。
当時は、Naomi という英語名があることを知らなかったので、びっくりでした。
マイロ
Milo という名も、一般的には「マイロ」。某麦芽飲料の『ミロ』はオーストラリアが発祥地で、ニュージーランドでも『マイロ』と呼ばれてました。ミロのヴィーナスも、英語読みだと「マイロ」のヴィーナス。
ダナ
Dana という名前は、「ダナ」とも「デイナ」とも発音します。男性は「ダナ」で、女性は「デイナ」とのこと。
海外ドラマ『X-ファイル』の主人公の一人、女性FBI捜査官の Dana Scully は、英語版の発音では「デイナ・スカリー」。日本語訳は「ダナ・スカリー」でした。
以下のサイトで、名前の発音が確認できます。
ニックネームと偽名
nickname(ニックネーム)
nickname は、an eke-name(追加の名前)という語が起源。これが、"a neke name" のようにスペルが間違ったところで区切られて、nickname になったのだとか。
英語名のニックネームは、時々不思議です。ぬいぐるみの熊 Teddy bear(テディ・ベア)は、元アメリカ大統領セオドア・ルーズベルト氏(Theodore Roosevelt)の愛称 Teddy が由来。
ちなみに「セオドア」は、ドイツ語読みだと「テオドール」です。
Anthony(アンソニー)の愛称も、Tony(トニー)。スペルを見れば、th があるからと納得できても、カタカナ書きだと、「ソ」が「ト」になるので、初めて聞いた時は違和感がありました。
alias(偽名)
alias [éiliəs] は、身元を明かしたくない場合の「偽名」です。「実名」は real name。
偽名は、よく anagram(アナグラム)[ǽnəgræ̀m] で作ります。アナグラムは、語句の綴り替えのこと。たとえば、「live」という単語のアルファベットの順番を変えると、「evil」という語が出来上がります。evil は live のアナグラム。
『X-ファイル』の Fox Mulder(フォックス・モルダー)は、アナグラムで M. F. Luder という偽名を使っていました。
こちらは、アナグラムを作ってくれるサイトです。
職業上の別名は、単なる「偽名」ではなく、それぞれ名称があります。
- code name:「暗号名」身元を隠すための仮の名
- pseudonym: [súːdənim]「仮名」時に、ぺンネームと同じ意味
- stage name:「芸名」役者の名前
- handle:「ユーザーネーム」ソーシャルメディアなどで使う名
「ハンドルネーム」は和製英語で、英語では handle。面白いですね。
(引用・参照元: Oxford Learner's Dictionaries, The Free Dictionary, Cambridge Dictionary)
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